移動手段に暮らす
小さい頃『ぼくのロボット大旅行』という絵本が好きでよく読んでたんだけど、1984年の本だからか、今は絶版らしい。僕自身今は手元に持っていない。小学生の時に友達の弟にあげてしまったから。
この本は確か小学生の主人公が隣に住む幼なじみ女の子と一緒にロボットを作って世界中を旅するという内容だった。ロボットは歩けるだけでなく泳いだり飛んだりできるのでアフリカやジャングルや南極に行ったりできる。描かれてる絵が本当にうまくて、ジャングルのうっそうとした感じや南極の見渡す限り真っ白な大地が絶妙なアングルで描かれている。
だけど僕がこの本に一番興奮したのはロボットの内部描写のページだった。
ロボットの内部描写というと、ガンダムの内部構造のような機械がびっしり詰まったのを考えがちだけど、この本に出てくるロボットは旅行用ロボットなので、ベッドやお風呂に冷蔵庫、捕まえた魚を入れる水槽や生活用品を入れるための棚なんかが描かれてある。もちろんエンジンや操縦席のメカニズムも描写されてるんだけど、幼い僕の心を掴んだのは居住スペースの方だった。移動手段に暮らしながら世界中のどこへでも行けるという最高なシチュエーションへの憧れはその後も供給される。
『ハウルの動く城』も移動手段に暮らす話だった。顔がついて黒煙を出しながら歩く、機械仕掛けの城というよりは無理やり居住区を載っけたようなそれのビジュアルを初めて見たときの衝撃は今でも鮮明に覚えている。たしかおはよう日本で見た。ハウルの城が素晴らしいのはさらに火の悪魔カルシファーがいる暖炉と、四つの場所につながるドアがあること。あと眺めのいいベランダ的な場所があることだ。
ほかにもONE PIECEやパイレーツ・オブ・カリビアンに見られる海賊船なんてのも最高。行き先の決まっている客船ではだめ。自由にどこへでも移動できて、そこに暮らせるからこそ最高なのだ。しかしONE PIECEを読んだことある人は知ってるかもしれないけど、主人公ルフィ達が乗る船は現在はゴーイング・メリー号だが、エニエス・ロビー編まではゴーイング・メリー号だった。
度重なる冒険で傷ついたメリー号に変わって船大工フランキーが作ったのがサニー号なのだが、これにはワクワクしない。羊の顔がついている以外は普通のキャラベル船のメリー号に対し、明らかに嘘くさいパーツだらけで、甲板が芝生のサニー号は「移動手段に暮らす」というよりは「生活空間が移動する」感じがして好きじゃない。二つの概念は似ているが真逆のものだ。ロボットに、船に、機械仕掛けの歩く城に暮らすから最高なのだ。
- 作者: 松岡達英
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 1984/04/20
- メディア: 単行本
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